企業での
活用事例

導入企業の声

自主保全士の活躍の期待

  • 株式会社豊田自動織機(愛知県刈谷市)
  • 生技・生産本部 生産管理部 PM室室長 浅井哲夫氏

  • 主要製造品目:自動車、産業車両、繊維機械等の製造・販売および物流事業等
  • 受験歴:2001年度より14年連続14回目
  • 延べ合格者総数:1級=約1096名、2級=560名(重複合格含む)

当社は2001年の制度制定以来14年間継続して自主保全士検定試験にチャレンジしてきた。これまでに2級560名、1級1,096名の合計1,656名(重複合格含む)が合格している。主な受験者は製造部門の職制およびオペレーターであるが、スタッフや技術員・専門保全・若手生産技術者等その対象職場は広がりを見せている。
ここ8年ほどは通信教育も含め毎年400名前後が受験しており、自主保全士の資格は技能員の有資格情報として人事データにも登録され、製造現場で働くものには欠かせないものとなってきている。

自主保全活動の重要性を再認識

当社は1987年にTPM(全員参加の生産保全)を導入し、1990年PM優秀事業場賞を受賞した。その後、生産の基盤となる『計画保全』や『自主保全』などの活動は日常管理に落とし込まれ、現場を中心に活動を継続してきた。
しかし、受賞直後のバブル崩壊による活動の停滞や、その後の急激な生産増対応による活動時間の減少などにより、次第に生産保全活動(以降PM活動)が形式的なものになった。
このため2005年頃から、全自動加工ラインの頻発停止の増加が問題となっていた事業部を中心に、自主保全活動の重要性が再認識され、資格取得の人数が急激に増加した。
2009年からは、PM活動の柱を『自主保全』『専門保全』『人材育成』の3本とし、会社としてPM活動再開を宣言し推進している。

自主保全士検定試験に取り組む狙い

当社では、製造現場の役割は”生産に何があっても乱れないよう『維持管理』し、さらに日々ロスを見える化し『改善』し続けること”だと考えている。当然この実現のためにはPM活動が不可避である。
自主保全士検定試験に取り組む一つ目の狙いは、この『維持管理』の大切さを知り、自らPM活動に取り組んでいく姿勢を身に付けてもらうためである。
二つ目は、社内階層別教育を補うことである。入社時・6年目・新任職長など階層別教育で日常管理やトヨタ生産方式(以降TPS)の教育を実施しているが、特に新任職長には、生産現場の『維持管理』には、稼動管理や設備管理といった日常管理が重要であり、そのためにはPM活動が必要であることを教えている。そのPM活動の本質を知ってもらう手段として、自主保全士検定試験を利用している。
三つ目に、改善の効果を継続させるためには、常に『維持管理』ができていなければならないことを理解させたいからである。我々トヨタグループの各社は、TPS改善活動を日々実践している。TPSの基本的な考え方でも、改善活動を進める前に、まず『安定稼動』のための『保全』が重要であると教えている。乱れたラインでは『標準作業』は成立しないからである。この考え方を理解してほしいと思っている。

資格取得に向けた教育

資格取得に向けた教育としては、毎年全社的な講習会を開催している。これだけでは不十分なため、事業部によっては独自に勉強会を開いているところもある。
ここ数年は合格・不合格だけでなく、そういった活動と合格率との関係などのデータを分析するため、勉強会の内容、試験勉強のやり方や時間なども調査し、次年度の活動計画に反映している。

活動の効果と自主保全士への期待

最近、生産ラインの稼働状況はかなり安定するようになってきた。これは、社内での教育や自主保全士検定試験による効果だと考えられるが、製造に関わる全部署がPM活動の大切さを勉強することで、再開したPM活動の意義を理解し、日々のPM活動がやらされでなく、ボトムアップの活動になりつつあるからではないかと見ている。
今後は、自主保全士が先頭に立ち、全ての生産ラインを、「PM活動を実践→設備故障や頻発停止の低減で生産が安定→後戻りしないTPS改善活動で生産性向上」という進化し続けるラインにして欲しい。
我々も事務局として、自主保全士検定試験へのチャレンジを、単に資格を取得するためでなく、自分の知識を増やし、仕事の質を高めることに繋げられるものだと思えるような仕掛けをしなければならないと考えている。

※本記事は2015年2月掲載時の情報です。